2-アルキルシクロブタノン類(2-ACBs)

2-アルキルシクロブタノン類(2-alkylcyclobutanones, 2-ACBs)は、照射食品を検知するための研究の過程で食品中に見出された放射線照射に特有な脂質の分解生成物です。脂質を構成する脂肪酸よりも炭素数が4つ少ないアルキル基を側鎖に持つ環状ケトンで、食品中では脂肪酸組成に応じたアルキル基鎖の2-ACBsが線量依存的に生成します。食品中の含有量は、牛肉中の脂質の20〜25%を占める主要な脂肪酸であるパルミチン酸から生成する2-ドデシルシクロブタノン(2-dDCB:2-dodecylcyclobutanone)では、米国で流通している照射ビーフバーガーパテ125 gあたり6μg程度とのことです。

1998年に、この2-dDCBをラットおよびヒトの培養細胞に高濃度で加えたところ、コメットアッセイ法でDNA切断が観察され、弱い変異原性の可能性が示唆されたことから、この物質の毒性学的研究が開始されました。しかし、その後の試験で、そのDNA損傷作用は前駆体のパルミチン酸と同程度の弱いものであること、2-dDCBはラットの体内で無害な2-ドデシルシクロブタノールに代謝され糞中に排泄されることなどが明らかとなり、世界保健機構(WHO)や欧州食品安全機関(EFSA)では、問題視する必要はないと結論しています。そして、どの国の食品安全規制当局においても、2-ACBsの存在を理由に食品照射に関する規制や許可条件を変更した例はありません。

日本でも2014年には2-dDCBも2-テトラデシルシクロブタノン(2-TDB)も遺伝毒性化学物質ではないこと、2015年にはラットに経口投与した2-TCBは毒性も腫瘍促進作用も示さなかったことが報告されています。

照射食品中の2-アルキルシクロブタノン類の検出と定量に関する文献リスト
(2010年12月現在)(日本食品照射研究協議会)

第50回記念大会特集 食品照射研究の歴史と現状 
36. 欧米における2-アルキルシクロブタノンの安全性試験と評価(食品照射、2014)


我が国で行われた2-アルキルシクロブタノンの毒性試験(食品照射、2015)