食品表示

「食のコミュニケーション円卓会議」と食品表示

食品表示は消費者と食品をつなぐ重要な情報源です。
しかし、複数の法律で規定されているため、ルールが複雑になっていたり、文字の大きさが小さかったりして、読んでもなかなか分かりにくいものになってしまっています。

「食のコミュニケーション円卓会議」では、定期的に食品表示の勉強会を開催したり、分かりやすい食品表示を実現するため、行政に対して積極的に意見を述べるようにしています。

食品表示法移行まであと7か月 (経過措置は、2020年3月31日まで)

 食品表示のルールが2020年4月1日より新しく制定された食品表示法に完全移行されます。以前の食品表示のルールは主に食品衛生法、JAS法及び健康増進法の3つの法律により規定されており、食品事業者が食品表示を作成するためには3つの法律を個別に調べる必要があり、表示ミスを引き起こす原因となっていました。また、消費者にとっても法律によって解釈が違う場合があり、理解するのが難しいルールでした。
 このような課題を解決するため、食品表示法は単純に食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品表示に関する部分を抜き出し結合しただけのものではなく、消費者及び食品事業者にとって分りやすい表示となるように、現行のルールを変えた部分があります。新ルールに移行するにあたり、変更になった部分を解説したいと思います。

1.加工食品と生鮮食品の区分の統一
 JAS法と食品衛生法において異なる食品の区分については、JAS法の考え方に基づく区分 に統一・整理することとしました。このため、食品衛生法では表示対象とはされていない軽度の 撤塩、生干し、湯通し、調味料等により、簡単な加工等を施したもの(例:ドライマンゴー)に ついては、食品表示法では「加工食品」として整理され、その結果、新たに、アレルゲン、製造 所等の所在地等の表示義務が課されることになりました。

 そのほか、JAS法と食品衛生法において定義が異なる「製造」「加工」についてはJAS法に統一されました。

製造 その原料として使用したものとは本質的に異なる新たな物を作り出すこと
加工 あるものを材料としてその本質は保持されつつ、新しい属性を付加すること

 このため食品衛生法では「製造」と定義されていた「小分け包装」は、食品表示法では「加工」と定義されることになりました。

2.製造所固有記号の使用に係るルールの改善
 食品衛生法では、最終的に食品衛生に影響を与えた製造者等の氏名及び製造所等の所在地を表示することが義務付けられていますが、同時に、あらかじめ製造者の氏名及び製造所の所在地を消費者庁に届け出た場合、製造者氏名、製造所所在地の表示を固有の記号に代えて表示することができる「製造所固有記号」の制度があり、食品事業者の多くがこの制度を利用していました。
 しかし、この制度は消費者に製造者氏名及び製造所所在地を隠している、消費者は製造者氏名及び製造所所在地を知りたいとの要望が強く、食品表示法を統一するにあたり製造者固有記号の制度が変更になりました。新しい制度では、原則として、同一製品を2以上の工場で製造する場合に限り製造者固有記号の制度が利用可能となり、1つの工場でしか製造しない製品は製造者固有記号の制度を利用できなくなりました。そして、食品事業者が製造者固有記号の制度を利用した場合、消費者が製造者氏名及び製造所所在地を知りたいときは、それを伝えることが義務化され、食品事業者はパッケージに、お客様相談室の電話番号や製造者氏名等を記載したホームページのアドレス等の表示が義務付けられました。

3.アレルギー表示に係るルールの変更
 アレルギー表示のルールは食品衛生法で規定され、2001年に制定されましたが、制度自体は 食品表示法に統一されるまで、14年間全く変更はありませんでした。今回、食品表示法に統一さ れるのにあたり、アレルギー患者の意見を聞き、アレルギー患者に分かりやすいようにルールの 変更が行われました。主な変更点は以下の通りです。

  変更点1:特定加工食品及びその拡大表記を廃止することにより、より広範囲の原材料に
       ついてアレルゲンを含む旨の表示が義務付けられることになりました。
       (特定加工食品とは、一般的にアレルゲンを含んで製造されていることが知られて
        いるため、それらを表記しなくても、原材料としてアレルゲンが含まれているこ
        とが予測できる加工食品を言います。)
       変更の理由は、近年、特定加工食品が書いてあっても、そのアレルゲンが含まれて
       いるとは予測できないアレルギー患者が増えてきたためです。一例をあげると、
       マヨネーズ(卵の特定加工食品)と書いてあっても卵が含まれていると予測できな
       いアレルギー患者が増えてきたことが挙げられています。

  変更点2:アレルギー表示には、個別表示(個別の原材料毎にアレルゲンが含まれている
       を表示する方法)と一括表示(原材料表示の最後にまとめてアレルゲンを表示する
       方法)の二つの表示方法が認められていましたが、アレルギー患者に分かりやす
       ように個別表示を原則とし、一括表示は例外で認めることになりました。
  変更点3:例外扱いの一括でアレルゲン表示する場合、一括表示欄を見ることでその食品に
       含まれる全てのアレルゲンを把握できるよう、一括表示欄に全て表示することにな
       りました。



4.栄養成分表示の義務化
 健康増進法では、栄養成分表示は任意表示でしたが、食品表示法に統一するにあたり、消費者が
健康で栄養バランスがとれた食生活を営むことの重要性を自らが意識し、商品選択に役立てること
で適切な食生活を実践する契機となるように栄養成分表示が義務付けられました。表示の基本は、
健康増進法の栄養表示基準を準用していますが、消費者の分かりやすさの観点、食品事業者の実行
可能性の観点から、一部のルールが変更になりました。

  変更点1:義務表示のエネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの5項目は従
       来と同じですが、消費者の分かりやすさの観点から、ナトリウム量は食塩相当量と
       して表示することになりました。

  変更点2:消費者の分かりやすさの観点から、表示様式を義務表示項目のみ表示する場合
        (様式1)と、義務表示事項に加え任意の表示事項を記載する場合(様式2)に
        統一しました。
  変更点3:食品事業者の実行可能性の観点から、次の①~⑤の場合は、栄養成分表示を省略
       できます。 ただし、栄養表示を行う場合はこの省略規定は適用できません。
        ①容器包装おおむね30cm2以下 
        ②栄養の供給源として寄与の程度が小さい 
        ③極めて短い期間(3日以内)で原材料(含む配合割合)が変更される 
        ④小規模事業者が販売 
        ⑤酒類

5.栄養強調表示に係るルールの改善
 栄養強調表示(栄養成分が多いことを強調する表示及び、栄養成分が少ないことを強調する表 示)は、健康増進法の栄養表示基準の表示ルールとほとんど変わっていませんが、食事摂取基準の2010年版から2015年版への改正及び国際整合性の観点から、下記の点が変更になりました。

  変更点1:食事摂取基準から導き出される栄養素等表示基準値の改正により、「高い旨」、
       「含む旨」、「強化された旨」(絶対差)の基準値が変更されました。このため、
       今まで栄養強調表示ができたものが、栄養強調表示ができなくなる可能性があるの
       で見直しが必要です。
  変更点2: 対象商品と比較して「強化された旨」又は「低減された旨」と表示する相対表示
       については、コーデックスの考え方を取り入れ、今までは対象商品と比較して基準
       値以上の絶対差があればよかったのに対し、新基準では絶対差に加えて、新たに、
            25%以上の相対差が必要となりました。

  変更点3:今まで何の基準もなかった「糖類無添加」及び「ナトリウム塩(食塩)無添加」
       の表示についてコーデックスの考え方を取り入れ、表示に基準を設けました。

6.栄養機能食品に係るルールの変更
 栄養機能食品の基本的ルールは健康増進法の栄養表示基準とほとんど変わりませんが、一部  下記の点が変更になりました。

  変更点1:栄養素等表示基準値の改正により1日あたりの摂取目安量に含まれる栄養成分量
       の下限値が変更になりました。
  変更点2:「n-3系脂肪酸」、「ビタミンK」、「カリウム」の3つの成分が栄養機能食品の
       対象栄養成分として追加になりました。

7.原材料名表示に係るルールの変更
 原材料名表示に係る2つのルール変更が行われました。

  変更点1:JAS法の品質表示基準では、大部分の加工食品が食品素材と添加物を分けて
       重量順に記載することになっていましたが、一部の個別食品で食品素材と添加物を
       分けずに重量順に記載するルールがありました。しかし、食品表示法に統一するに
       あたり、一部の個別食品のルールをなくし、すべての加工食品で食品素材と添加物
       を分けて多いもの順に記載することになりました。
  変更点2:JAS法の加工食品品質表示基準において、複合原材料表示のルールで括弧の中
       を省略する規定はありましたが、食品表示法に統一するにあたり、括弧の中を省略
       する規定に加えて、ある一定の条件下では複合原材料名を書かずに括弧の中の原材
       料を分割して表示することが可能になりました。

8.販売の用に供する添加物の表示に係るルールの改善
 今までは販売の用に供する添加物の表示は、食品衛生法のみのルールに従っていれば問題あり ませんでしたが、食品表示法に統一されるにあたり、JAS法、健康増進法のルールが適用にな るため、消費者向けに販売される添加物については「栄養成分表示」「内容量」「表示責任者の 氏名又は名称及び住所」の表示が追加となりました。


9.通知等に規定されている表示ルールのうち、基準に規定するもの
 フグ食中毒対策の表示及びボツリヌス食中毒対策の表示については安全性の確保の観点から、 通知による指導レベルではなく、食品表示基準で規定し、表示義務を課すべき表示ルールになり ました。
 また、分かりやすい食品表示基準を策定するという観点から、基準と通知等にまたがっていた 特定保健用食品の表示ルールを食品表示基準に一本化されました。


10.表示レイアウトの改善
 表示レイアウトに関する2つの改善が行われました。
 1)表示可能面積がおおむね30cm2以下の場合、省略できる表示事項が食品衛生法とJAS法
  で異なっていましたが、食品表示法に統一するにあたり、安全性に関する表示事項
  (「名称」、「保存方法」、「消費期限又は賞味期限」、「表示責任者」、「アレルゲン」
  及び「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」)については、省略不可。その他の表示事項は
  省略が可能となりました。
 2)JAS法の加工食品品質表示基準では、原材料名の表示は食品素材と添加物を分けて重量
  順に表示するとしていましたが、消費者から食品表示と添加物の境目が何処か分かりにくい
  ので明確にしてほしいとの要望があり、食品表示法では、食品素材と添加物を明確に分けて
  重量順に表示することとしました。明確に分ける方法としては、添加物の事項名欄を設ける
  方法及び添加物の事項名欄の設けない方法(記号で区分する、改行する、別欄を設ける)が
  あります。


 以上、10項目の現行ルールからの主な変更点を説明してきましたが、2020年3月31日までの経過措置期間中においては、製造所固有記号の改善を除いて、一つの商品で旧基準と新基準の混在は認められていません。
完全移行まで1年を切っていますので、食品事業者は早急な実施が求められています。