食品照射Q&A 基本版

Q1 食品照射って、何ですか?

A1:
食品や農産物に放射線 を当てて、殺菌、殺虫、芽止めなどを行うことです。放射線照射された食品を照射食品 といいます。乾燥、加熱、加圧、冷凍などと同じく物理的な食品処理技術の一つで、食品の衛生化や保存期間の延長によって、より安全な食品の供給確保に役立っています。  日本で許可されているのはジャガイモの芽止めだけ ですが、世界各国で食品への放射線の利用 が許可されており、香辛料・ハーブ類の殺菌や熱帯果実の殺虫、ニンニクの芽止めなどが実施されています。

Q2 照射しても安全なの?

A2:
安全です。
病院でX線透視(レントゲン検査)を受けてもX線は体の中には残らないように、放射線は食品の中には残りません。食品の栄養成分や品質はほとんど変わらず、有害な物質もできません。
照射食品を食べても大丈夫かどうか、動物等を使って1960年代からこれまでに国内外で膨大な研究が行われてきましたが、健康に悪影響が出るという証拠は一つもありませんでした。照射食品の安全性は世界保健機構(WHO)でも確認され、WHOと国連食糧農業機関(FAO)が合同で設置したコーデックス委員会の国際規格にも採択されています。先進国の中で香辛料・ハーブ類の照射殺菌を禁止しているのは日本だけです。

Q3 どんな役に立っているのですか?

A3:
日本では、8~10月に収穫して翌年の3~4月に出荷する北海道のジャガイモの一部に放射線をあてて、春先の暖かい店頭に並べても芽が出ないようにしています。芽が出たジャガイモには食中毒の原因となるソラニンという物質が含まれていますが、芽止めをすることで、九州産の新ジャガが出回る前の端境期にも安全で美味しいジャガイモを食べることができます。また、食品そのものではありませんが、飲料の無菌充填用のPETボトルの滅菌にも広く使われています。
海外では、ニンニクの芽止め、輸入果実や穀類の殺虫(植物検疫)、食中毒防止のための冷凍冷蔵肉・魚介類や生野菜の殺菌、加工食品の原料に使われるスパイス・ハーブ類や乾燥野菜の殺菌、NASAの宇宙食の滅菌にも使われています。放射線を使えば加熱せずに殺虫や殺菌ができるため、食品の風味をより良く保つことが知られています。

Q4 日本の消費者も食品照射の理解を進めることが必要ですか?

A4:
現在の日本の豊かな食生活を支えているのは、農業、食品製造、貿易・流通など食に関わるあらゆる現場での不断の努力と様々な技術革新の積み重ねです。この努力や技術革新について、消費者は、なかなか気付きにくいことでしょう。食品照射も、安全で豊かな食生活を実現するために、必要があって生まれて来た技術の一つです。
食品照射は世界各国で実用化されていますが、日本は国際的な流れに取り残されています。その一方で、多くの消費者は、食品照射について正確な知識を持てないまま、「食品に放射線を照射する」と聞いたときの素朴な疑問や不安を抱えて、どう判断すればよいのか途方に暮れているのが現状です。
望ましい食生活の実現のためには、そのような消費者に正しい情報を提供し、食の安全に責任を負う行政機関と、食品のことを誰よりもよく知っている食品業界と、適切な知識を身につけた消費者とが、お互いの立場への理解を深めて行くことが必要ではないでしょうか。

Q5 海外で色々な食品へと実用化されているのに、なぜ日本ではジャガイモだけなのでしょうか?

A5:
ジャガイモの他に、さまざまな照射食品の安全性が国内外の試験で確認されていますが、日本でジャガイモに続いて許可されなかったのは、一部の消費者団体の反対運動などの政治的な問題と考えられます。その後も日本では、ジャガイモ以外の食品への放射線照射の適用については、消費者の理解が不十分であることと事業者のニーズが少ないことを理由に慎重な姿勢が続いており、2000年12月の全日本スパイス協会による厚生省(当時)への香辛料の放射線殺菌の許可の要請にも、いまだに対応がなされていません

Q6 食品照射のデメリットってなんでしょうか?

A6:
食品によって、また目的によって異なりますが、一般的には以下の3つが考えられます。
(1)コストが高い
(2)食品によって向き不向きがある
(3)消費者の感覚的な拒否反応が心配

Q7 表示は大切だと思うのですが、海外ではどのようにしているのでしょうか?

A7:
EUでは、すべての照射食品で表示することを義務づけています。米国では、肉類と果実は表示をしていますが、香辛料は表示していません。カナダでは、成分の10%以上が照射されている場合に表示を義務づけています。中国など多くの途上国では表示は行われていません。
このように、表示や検知に対する考え方は国によってかなり異なっているのが現状です。

Q8 照射した食品かどうかを見分けることはできますか?

A8:
照射の有無を判定する検知法があります。
照射食品は、農薬や添加物による処理と異なり食品中に残留する化学物質がなく、照射によって食品に生じる変化も加熱処理などと大差がないため、照射の有無の検知は比較的困難ですが、線量計の原理を応用した熱ルミネッセンス(TL)法などいくつかの方法が開発されています。それらを用いて、例えば香辛料や茶葉が放射線照射で殺菌されたものかどうかの判定が可能です。