食品表示法施行後の新しい動き

 食品表示法は2013年6月に公布、2015年4月に施行され、5年の経過措置期間を経て2020年4月1日より完全施行されました。食品表示法は食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品表示に関する部分を抜き出し結合したものであり、一部、消費者及び食品事業者にとって分りやすい表示となるように、現行のルールを変えた部分(輸入食品事業者の窓 No.42、43参照)はありますが、大枠は現行の義務事項を踏襲しました。
 本来ならばこの機会に、色々課題がある個別の表示事項についての問題点を掘り下げて検討し、食品表示法が施行の時に一緒に解決すべきでしたが、今回検討に時間がなかったため、積み残し課題として、食品表示法施行後、別途、検討することとなりました。

1.加工食品の原料原産地表示の拡大
現行のルールで加工食品の3割しか原料原産地が表示されていない現実の中、消費者が原料の原産地をもっと知りたいという要望を受け、消費者庁は原料原産地表示の拡大を目指し「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」(2016年1月~11月)を立ち上げました。当初は現状ルールの延長線上での拡大を模索していましたが、途中で大幅な方向転換があり、全ての加工食品に原料原産地表示を行うことを大前提に、検討を進めていくことになりました。結果、国内製造の全ての加工食品の重量割合上位1位の原材料を義務表示の対象としました。表示方法は国別重量順表示を原則としますが、国別重量順表示が難しい場合は「又は表示」「大括り表示」を可能としました。また、原材料が加工食品の場合は「製造地表示」を行うこととしました。            (2017年9月1日施行、経過措置期間2022年3月末)

2.遺伝子組換え表示の厳格化
 遺伝子組換え表示は2001年4月に施行され、5農産物と24加工食品群が義務化されました。その後、表示義務対象品目が都度都度追加され、現在8農作物と33加工食品群が表示の対象となっています。今回、遺伝子組換え表示制度を全般的に見直すため「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」(2017年4月~2018年3月)を立上げました。表示義務対象範囲及び表示方法を検討した結果、表示義務対象範囲については現行通りで変わらず、表示方法については、誤認防止の観点から任意表示である「遺伝子組換えでない」の表示が認められる条件を現行制度の「5%以下」から「不検出」に引き下げることとしました。(2023年4月1日施行)

このため、「遺伝子組み換えでない」と表示している食品事業者は施行日までに、自製品の遺伝子組換え原材料の混入度合いを把握し、「遺伝子組換えでない」との表示ができるのか、できないのか。表示ができない場合は、表示を止めるのか、「分別生産流通管理済み」等の表示を行うのか、選択を迫られることになりました。

3.食品添加物表示の見直し
 食品添加物表示制度は1989年に表示対象が大幅に拡大されて以来、見直しがほとんど行われてこなかったこともあり、今回、食品添加物表示制度を全般的に見直すため、「食品添加物表示制度に関する検討会」(2019年4月~2020年2月)を立ち上げました。
 検討会での検討の結果、一括名表示、簡略名・類別名表示及び用途名表示は現状ルールの維持が適当と結論付けました。また、「無添加」、「不使用」の表示については、消費者誤認防止の観点を基に、食品表示基準から「人工」「合成」の用語の削除。消費者の誤認を招く無添加表示の対応のためのガイドライン作成を提案しました。また、栄養強化目的で使用した食品添加物は全ての加工食品に表示する方向で検討することとしました。

4.食品添加物の不使用表示ガイドラインの制定
 食品添加物表示制度に関する検討会(2019年4月~2020年2月)での検討の結果、食品添加物の不使用表示は規制がなく、表示内容も多岐に渡り、一部に消費者の誤認を招く不使用表示も存在していたため、食品表示基準第9条の表示禁止事項に該当するかどうかを明確にするため、食品添加物の不使用表示に関するガイドラインを策定することとなりました。
 食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会(2021年4月~2022年3月)での検討の結果、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が策定され、2022年3月30日に「食品表示基準 Q&A」の別添として公表されました。

 ガイドラインでは不使用表示を行うにあたり注意すべき表示を下記の10の類型に分類しました。
 類型1:単なる「無添加」の表示
 類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
 類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
 類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
 類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
 類型6:健康、安全と関連付ける表示
 類型7:健康、安全以外と関連付ける表示
 類型8:食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
 類型9:加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認     できない)食品への表示
 類型 10:過度に強調された表示

 そして、各類型毎に、食品表示基準第9条の表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示を整理しました。
 不使用表示を行っている食品事業者はガイドラインを用いて表示の自己点検を行い、2024年3月末までに必要に応じて表示の見直しを行うことが求められています。