植物検疫(Plant Quarantine)

植物の輸出入に伴い植物の病害虫がその植物に付着して侵入しないように輸出入の時点で検査を行い、検査の結果消毒などの必要な措置(Phytosanitary Measures)をとること。「検疫」とは、伝染病を予防するため、その有無につき診断、検査し、伝染病の場合には消毒・隔離などを行い、個人の自由を制限する行政処分のことです。

現在、食品照射の処理対象として最も伸びが著しいのが、植物検疫のための照射殺虫(不妊化)処理です。元・米国農務省(USDA)のHallmanの総説※1によれば、生鮮農産物の検疫目的での照射処理量は、2005年の約4,000トンから2015年には約25,000トンに急増しています。
現在、米国の植物検疫当局(農務省/動植物検疫局/植物保護検疫局:USDA/APHS/PPQ)は、米本土の3施設の他に、インド、南アジア、メキシコおよびハワイにおいて合計11箇所の輸出前処理施設(offshore施設)を承認しており、米国向けの農産物は、これらの施設で輸出前に照射されることで事前に植物検疫上のリスクが無いことを確認され(プレクリアランス)ます。
これによって、米国に到着後に検疫当局による現物検査を受けることなく迅速に流通させることが可能となり、大きなメリットとなっているようです。このプレクリアランスの仕組みで米国に輸入される照射農産物の量は年々増加していて、主な輸出国はメキシコ、タイ、ベトナム、インド、オーストラリアとなっています。

また、オーストラリアでは2004年からニュージーランドへの照射マンゴーの輸出を開始しました。オーストラリアとニュージーランドの食品安全基準(FSANZ)※2は統一されており、殺菌目的の香辛料・ハーブ類の照射や植物検疫目的の熱帯果実・野菜類の照射が許可※3されています。
2014年現在、植物検疫目的ではマンゴー、パンの実、スターフルーツ、チェリモア、ライチ、リュウガン、マンゴー、マンゴスチン、パパイヤ、ランプータン、カキ(柿)、トウガラシ、トマト、リンゴ、アンズ、サクランボ、ハニーデューメロン、ネクタリン、モモ、プラム、ロックメロン、イチゴ、ブドウ、ズッキーニの計24品目の照射が許可され、輸出量も急増し、ASEAN諸国向けの輸出も拡大傾向にあるようです。

 ※1Hallmanの総説 → Guy J. Hallman, Paisan Loaharanu, "Phytosanitary-irradiation-             Development and application”, Radiation Physics and Chemistry,             129, 39-45 (2016).

 ※2FSANZ → Food Standards Australia New Zealand

 ※3照射が許可 → Australia New Zealand Food Standards Code - Standard 1.5.3 -
          Irradiation of Food

植物検疫のご紹介(農林水産省 植物防疫所)
各国の食品照射の現状(2013年後半〜2015年前半)(食品照射、2015年)