超巨大分子DNAは生物のアキレス腱
放射線のヒットは相手の物質が何であるかに関係なくランダムに起こります。放射線が細胞を通り抜けるときDNAをヒットする確率は高くはありません。しかし、生物の細胞にはとてつもなく長いDNA分子がコンパクトに折り畳まれて収納されており、そのごく一部が切断されただけでも正常な細胞分裂が不可能になります。
そのため、どんな生物でも、遺伝情報を記録する大切なDNA分子が細胞内の生理的な化学反応や自然放射線によって損傷(不都合な物理・化学的変化)を受けるたびにすぐに元通りに修復する仕組みを備えていますが、その能力を超えて大量の損傷が生じると修復が追いつかなくなり、死に至ります。
どのくらいの線量の放射線を当てるとそうなるかは、その生物のDNA修復能力に依存しますが、一般的な殺菌線量に相当する10 kGy(キロ・グレイ)のガンマ線を照射しても、殺菌後の温度の上昇はたかだか2.4℃に過ぎません。だから、冷凍食品であろうと、その温度を保ったままで殺菌できるわけです。