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vol07.身近な食品に隠された宇宙の技術

大平洋介:2010年6月

近頃、宇宙・天文関連のイベントやニュースが立て続けにありました。ちょっと思いつくだけでも、昨年の日食、先日の月食、日本人宇宙飛行士による国際宇宙ステーションISSに関するミッションの数々など、わくわくさせられるニュースが目白押しでした。そのなかでも一番の注目を浴びていたのは、「はやぶさ」の帰還ではなかったでしょうか?


小惑星探査機 はやぶさ は2003年に打ち上げられ、イオンエンジンの実証試験や小惑星への着陸・サンプル採取など、多くの成果をあげたばかりではなく、数々のトラブルを関係者の驚異的な努力で乗り越えて地球に帰還しました。その行程は実に60億kmにもなるそうです。現在は、小惑星イトカワから持ち帰ったカプセルの精密な分析が行われている最中で、さらなる成果をもたらすかもしれません。

jaxa:はやぶさのサイト

ところで、はやぶさをはじめとする人工の天体の多くは太陽電池を大きく広げた姿をしています。実はこの太陽電池を効率よく折りたたみ広げる技術を開発したのは、日本人であることをご存知でしたか?

その技術はミウラ折りといって、JAXAで宇宙構造工学を研究する、東京大学名誉教授の三浦公亮氏が考案したものです。折った時にかさばらず、かつ立体的になるように工夫されたたたみ方で、とてもコンパクトに折りたためるだけでなく、折りたたんだ一端を引くだけで、全体を一気に開くことができる特殊な折り方です。

jaxa:宇宙に開く「ミウラ折り」

そんな宇宙開発の専門家が開発した技術が実はコンビニやスーパーで売っている商品にも使われていることをご存知でしょうか?

それは、ダイヤカット缶といって、缶の側面にたくさんの三角形の模様が刻まれていて、まるでダイヤモンドのようになっています。そして、ふたを開けると、模様がくっきりと現れます。 この模様は視覚的な効果を狙ったものではなく、強度を保ちながら軽量で薄い缶を実現する技術で、従来の缶と比べて30%もの軽量化を実現しているそうです。1缶での重量に大きな差はないかもしれませんが、出荷量全体にするとかなりの省エネ効果を生んでいそうです。

jaxa:ダイヤカット缶

こういう形に見える技術だけでなく、現在の食品安全をささえる最重要技術の1つであるHACCPも、もともと宇宙開発から生まれた技術です。

宇宙開発と言えば莫大な予算がかかる割に、一般市民には還元されるような成果がないのではないかという批判は昔から耳にしますが、少なくとも食の分野には十分な見返りが得られているといえそうですね。