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vol05.食中毒の苦い思い出

山崎彰:2010年3月

我が国では多くの方々が食の安全に不安を感じています。不安感と言うのは相対的でその感じ方は人それぞれ。従って、その感情に異議申すつもりはまったくありません。しかしながら、我が国は世界一の長寿国で、水道の水がそのまま飲めて、生で魚が食べられて、食中毒で亡くなる方も他国に比べ滅法少ない。夜中でも一人で街を歩ける(関係ないか!!)。世界的に見て、こんなに安全な国はなかなかありませんよね。それでも世のなか不安だらけ。
 食の安全を語る際、特に話題に上るのは「農薬」、「遺伝子組換え」、「食品添加物」(いわゆる「不安3兄弟」)。賢明なる皆様は、実生活において「不安3兄弟」が実質的に「ゼロリスク状態にある」ことは充分ご認識です。そして、日常的に留意しなければならないのは微生物による食中毒であることも充分承知されています。

 小生自身、微生物による食中毒の被害に遭ったこともありません(エチルアルコールによる急性胃腸障害、脱水症状、頭痛、記憶障害はほぼ週に1回のペースで患っていますが)。しかし、加害者側にまわったことは、大変恥ずかしいのですが、何度か体験しています。

 小生、若かりし頃、飲食店やホテル、更にはケータリング等の衛生管理の仕事を担当していた時期がございますが(今思えば、随分リスキーな仕事だったなァ~、と感じています)、特にホテルを担当していた時には、比較的多くの方々にご迷惑をかけました。

 ホテルは一見華やかで清潔感があり、なんとなく安心感があります。しかし、時と場合によっては要注意。大きな宴会がいくつも集中する場合があり、そんな時は、色々な人々が会場や厨房を行き来します。一時的な大混乱とキャパオーバーのなか、衛生管理の基本がどうしても疎かになってしまい、小事が大事を招いてしまう。と言うのがホテルにおける食中毒事例の大方の筋書きです。それでもメニューや調理方法の工夫で食中毒を出さないのがプロのはずなんですが・・・。

 食中毒に罹患した方々はそれだけでも不幸ですが、特に不幸なのが、結婚披露宴での食中毒です。宴会の途中で患者が出ることはめったにありません。翌日、翌々日あたりに苦情が出てきます。当たり前の話ですが、おめでたい席で病人を出した、なんて主催者側からしてみれば、言語道断、怒り心頭です。新婚旅行は中止、親戚筋には謝罪行脚・・・。怒って当たり前ですよね。一方、苦情を受ける側から見れば、身から出た錆と言えども、謝罪、原因究明、補償、行政への説明、営業停止、再発防止策の提出、と寝る暇無く、当事者はどんどん無表情になっていきます。経済的損失も極めて大きく、恥ずかしながら今でも夢に見ることがあります。

 こんな体験をしてきたせいでしょうか、家庭でも衛生管理には結構気を配っています。息子、娘曰く、「うっせー親父だなァ」。「でもねキミたち、統計に上がってこない家庭内での食中毒って、結構あるんだよ」と優しく語りかけても、会話になりません。飲食店に行けば、なぜか厨房内が気になり、店員さんの動きを目で追ってしまいます。「おいおい、兄さん(姉さん)。そんなことしていると、いつかひどい目に遭うよ!!」と声を掛けたくなるときがあります。

 いずれにしても微生物による食中毒は結構身近に存在します。未然に防止するための方法は皆さん既に心得ておられるかと思いますのでここでは申し上げませんが、町内会や学校のイベントなども多くなる季節ですので、少しだけ気を配って、楽しい食生活を送っていただきたいと思います。小生の様に苦い思い出にならない様にしてください。