一つ前へ 一覧に戻る ▶一つ後ろへ

vol16.貿易礼賛―あるのん兵衛で食いしん坊なサイレント・マジョリティーのひとり言

飯島みどり:2012年5月

人生山あり谷ありいろいろあれど、こと食の選択肢となるとこんな恵まれた環境はない。いい時代にいい国に生まれてきたものだと感謝せずにおれない。

幼少のみぎり、ヨーグルトは私にとってあこがれの食べ物であった。

下町の商店街の小さな食品店の冷蔵庫に置かれた小瓶に入ったヨーグルト。
祖母と買い物に出るたびにその白くなめらかな様子の食べ物が気なってしょうがなかった。おねだりしてもなかなか買ってもらえなかったこともあってか、あこがれとなった。

初めて味わったときの感動は忘れない。柔らかくなめらかな食感に甘酸っぱい味。まるで天に昇るような気分であった。

私の「食いしん坊」道の始まりである。
長じて、暇を見つけては海外に貧乏旅行に出るのが趣味となった。
 
南国で 初めて味わうトロピカルフルーツの数々。とりわけマンゴーとマンゴスティンに魅せられた。天に昇るような気分を再び味わった。

アメリカでは、搾りたてのオレンジジュースとアメリカンチェリーのたっぷり入ったアイスクリームの美味しさに我を忘れた。

イタリアとフランスに赴いた時には、ワインとチーズと生ハムに夢中になった。その種類は豊富で、なんと質の高いことか。また、なによりそれらを楽しく味わうヨーロッパの大人の文化にも魅せられた。

「嗚呼、日本でこれらの物が身近に味わえたら、なんと幸せなことだろう。」ずっと、そう思ってきた。

それが今では、飛行機に乗って何時間もかけて旅せずとも、10分歩けば手に入るようになった。選択肢が増え私たちの食生活は実に豊かになった。また海外にいるときには、日本の食材が手に入るようになった。貿易と流通の発達のおかげである。

そう、もうひとつ忘れてならないのが検疫だ。

先だって、「円卓会議」のはからいによって成田空港の検疫所を見学する機会を得た。

病害虫が国内に侵入するのを防ぐため日々地道な作業が行われているのを見た。係官たちは、輸入されてきた生鮮果実や肉などを丹念にチェックしていた。

これは他国でも同じこと。貿易に付随するルールだ。こうやって貿易が担保され豊かな食生活が支えられているのだと分かった。

人生いろいろあれど、好きなものを手軽に味わい楽しめる今の生活はなんと幸せなことか。貿易と検疫に支えられた豊かな食生活に乾杯!